ぬばたまの闇に浮かぶは白き月 闇深きこそ冴えわたるかな
滴塵019
本文
ぬばたまの闇に浮かぶは白き月 闇深きこそ冴えわたるかな
形式
#和歌
カテゴリ
#5.自然・風景
ラベル
#夜 #月 #光 #自然現象 #精神 #悟り
キーワード
#ぬばたま #光明 #白月 #対比 #冴え #闇
要点
闇の深さがあるからこそ、月の光の清らかさが際立つ。
現代語訳
漆黒の闇に白い月が浮かぶ。闇が深いからこそ月はひときわ冴えて輝く。
注釈
ぬばたま:黒・夜を表す枕詞。
白き月:清浄な月光。真理、希望、または仏性の象徴。
冴えわたる:月光や音・気配が澄んでいるさま。
闇と光の対比は仏教的にも用いられる普遍的象徴。
解説
この和歌は単なる自然描写にとどまらず、闇の深さが光の純粋さを引き立てるという逆説を示している。仏道的には「煩悩が深ければ深いほど悟りの光は強く顕れる」ことを示唆し、精神的象徴性を持つ。自然詠のかたちを借りながら、同時に哲理を帯びた歌であり、風景と心象が重ねられた佳品といえる。
深掘り_嵯峨
この歌は、真理や希望の現れ方について述べている、哲学的な一首です。
「闇」は、煩悩、苦悩、迷い、あるいは世の無常といった負の要素を象徴しています。それらが深く濃い(闇深き)からこそ、白き月(悟りや真理)の清浄な輝き(冴えわたる)が、より一層際立って見えるのだ、という逆説を表現しています。苦しみなしに悟りはないという、仏教的な深遠な真理を、美しい自然の情景に重ねています。